名古屋地方裁判所 昭和44年(ワ)3015号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕本件交差点は交通整理が行われておらず、農道に比して国道の巾員は明らかに広いのであるから、B車がこの交差点に入ろうとする場合において国道の左右いずれかからでもこの交差点に入ろうとする車輛があるときはその進行を妨げてはならない(同法第三六条第三項)のである。而して、ここに「その進行を妨げてはならない。」というのは、進行を妨害したり、進行を遅らせてはならないということであり、「巾員が広い道路から当該交差点に入ろうとする車輛があるとき」は、双方の車輛が同時に交差点に入ろうとする場合に限らず、具体的な交通状況(即ち、双方の車輛の速度、進行方法、道路の状況等)に応じて、巾員の狭い道路から交差点に入ろうとする車輛が若しその交差点に入つたならば、当該交差点内に在る間に巾員の広い道路を進行して来た車輛が当該交差点に進入することになる場合をも含むものと解するのが相当である。(これと異なる見解を示すものに、新版註釈道路交通法一八〇頁、新交通読本一二一頁)
そこで、これを本件について見ると、当初被告は国道上の左右の車輛が本件交差点に到達する以前にこの交差点を横断通過することができると判断して交差点内に発進進入したのであるが、左方の自動車はB車がセンターラインに達したところで早くも本件交差点に達し、そのためB車はその場に停止しなければならないこととなり(広路の自動車の進行を妨げてはならない。)、その結果、右方の自動車(A車)も本件交差点に到達することになつたのであるから、客観的には、B車が交差点に入ろうとする場合にA車は当該交差点に入ろうとしていた場合であるといわなければならない。そして、B車の進行並に停止の状況を見ると、B車はその前部が国道のセンターラインを三〇センチメートル越えた地点まで進行してその場に停止し、その車体のうしろには2.03メートルの巾の車道部分が空いていたけれども、B車が停止したとき、時速六〇乃至七〇キロメートルでセンターライン沿いの通行帯を進行して来ていたA車は既に凡そ五〇メートルの距離に迫つており、巾1.445メートルのA車がそれからハンドルを左に切つてB車の後ろに空いている2.03メートルの部分を通過するには、それが可能であることは勿論としても著しく減速して徐行に近い速度で進行しなければならないことは経験則上明らかであるから、A車の進行を妨げたことになるものというべきである。従つて、客観的には、もしB車が発進して交差点内に進入すればA車の進行を妨げる場合であつたにも拘らず、被告がそのようなことはないと誤つて判断して発進したところに過失があつたといわなければならない。(藤井俊彦)